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7月19日 1学期終業式講話から:「採長補短」と「憤・立志・恥を知る」

2016.07.19

明日、夏休みの初日の月はどんな形の月でしょうか、ちょっと想像してみてください。今夜は小望月といって陰暦14日の月です。明日20日は十五夜、望月(満月)です。夕方6時ごろに東の空に上がり、一晩中見えています。4月8日始業式の日の月は偶然にも月も第1日目でした。振り返ってみると早いもので、あれから満ち欠けを繰り返して明日は4回目の満月です。
教室にある日めくり暦の今日の四字熟語に「採長補短」がありました。他人の優れた点を積極的に採り入れ、自分の短所を補うようにするということですが、月でいうと、光の部分を見て、一日一日と光を重ねて満月に向かっていくということです。昨日18日に発表のあった、ソフトバンクが英国の半導体設計会社ARMを3.3兆円もかけて買収したというのも、日本が実現しようとしている超スマート社会の基盤となるIоT(モノのインターネット)ビジネスのための、ソフトバンクの採長補短です。
日めくりには佐藤一斎(1772~1859 江戸時代の儒学者)の「われまさに人の長所を見るべし、人の短所を見るなかれ」という言葉も書いてありました。ソフトバンクの孫正義社長はARM社の長所を見たわけで、「非常に大きなチャンスであり、将来を信じて投資した」ということです。
ところで、佐藤一斎という人は江戸幕府の学問所である昌平黌の儒官といって現在の学長を務め、二松學舍の創設者三島中洲先生は安政5(1858)年、晩年の佐藤一斎に学んでいます。また中洲先生の師である山田方谷もこの門下生です。この門からは佐久間象山はじめ多くの学者が出て、その教えを吉田松陰や勝海舟などが受け継いで、その学問の流れの中で幕末維新にかけてたくさんの人たちが活躍しました。佐藤一斎の著作「言志四録」は西郷隆盛も愛読し、現代でも人生の羅針盤として広く読まれており、講談社学術文庫に4冊で出ています。皆さんもチャレンジしてみてください。
第1冊目の「言志録」の始めのほうに「憤の一字は、是れ進学の機関なり」「学は立志より要なるはなし」「立志の功は、恥を知るを以て要と為す」といった言葉があります。皆さんが夏休みを迎えるにあたって、参考になると思いますので少し説明を加えます。
「憤の一字は、是れ進学の機関なり」の「憤」という字はりっしん偏の心と、音を表す旁「賁」は、古墳の「墳」の「高くいっぱい盛り上がる」意味と似て、「気が充満する(いっぱいになる)」意。つまり心の中に気が充満することから、心がいっぱいになって「いきどおる」「ひどくいかる」「ふるい立つ」という意味です。「進学」は学問に進む。「機関」は機械でエンジン(発動機)といったところ。皆さんにあてはめると受験や勉強、試合や大会、コンクールにしても、それらに向かうにあたっては「憤」つまり「もうおこったぞ、見てろよ、本気だぞ」というぶるぶる震えるような気持ちの動きが大事だということです。
「学は立志より要なるはなし」とは、「立志」は読んで字のごとく志を立てる。学問は目標を立てることから始まるということです。勉強にしても部活動にしても目標設定がなければ始まりません。
「立志の功は、恥を知るを以て要と為す。」とは、志を立て目標設定をして功つまり実績をあげるには、恥を知ることが鍵になるということです。この場合の恥は外からの恥ばかりでなく内心に恥じることも含まれます。「論語」に「君子は其の言の其の行ないに過ぐるを恥ず」(憲問 第十四)とあります。自分の発言内容のほうが自分の実践内容よりも過大であることを恥とするということです。
野球のイチロー選手が歴代最多記録に到達したときのインタビューで、「子供の頃から、人に笑われてきたことを常に達成してきた自負はあります。小学生の頃、毎日練習して近所の人から『あいつプロ野球選手にでもなるのか』と笑われた。悔しい思いもしましたが、プロ野球選手になった。米国に行く時も『首位打者になってみたい』と言って笑われた。でも、2回達成したり…」とありました。この「人に笑われて悔しい思いをした」というのが「恥を知る」ということであり、言ったことを達成して自分に恥じない「有言実行」につながっています。
皆さんもこの夏休みに、まずは目標をたてましょう。そして「憤・立志・恥を知る」を実践してください。心をふるい起こして目標を立て、それに向かって恥ずかしくないよう行動してください。達成目標という点では、実現する確率が20%ぐらいの目標を設定するといいでしょう。このぐらいのレベルだと、周りからそんなの無理に決まってると笑われるかもしれませんが、逆に先ほどの「憤の一字」のように、よほど気合が入ります。
例えば模試の合格判定で「E」というと合格率20パーセント以下ですが、「A」の80パーセント以上に向かうのとは意気込みが違います。達成できる目標ばかり設定していては、今の自分を変えることはできません。筋肉でいうと負荷をかけないと強くなりません。100メートル9秒台を目指さなないと10秒を切れないのと同じです。人に笑われて悔しい思いをしても、失敗して笑われたとしても、自分自身のためにチャレンジすることが大事なのです。
Let’s begin,never give up.  熱中症や事故に気を付けて「欲張る、頑張る、粘る」いい夏休みを過ごしてください。そして、9月1日にまたみんな元気でここにそろいましょう。

長谷川 成樹




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